役職定年と「居場所」の問題:なぜ早期退職を選んだのか

決断理由
この記事は約4分で読めます。

56歳という年齢になって、以前よりも強く意識するようになったのが、「会社の中での”居場所”」という感覚です。

私は大手IT企業で33年勤務し、40代以降は管理職としてプロジェクトを率いてきました。技術者の視点と管理職の視点を両方持っている身として、ここ数年「自分の役割は、本当に変わっていくべきか」という問いを、場面ごとに思い浮かべるようになりました。

この記事では、役職定年という制度がもたらす現実と、それが早期退職という決断にどうつながったかを書きます。50代で同じような違和感を抱えている方に、一つの事例として読んでいただければ幸いです。


役職定年という”仕組み”が意味すること

私が勤める会社では、56歳前後を「役職定年」とする制度があります。これまでの管理者ポジションを、基本的にこれ以降は維持しなくなるという、キャリア上の一つの仕切りです。

職務自体は引き続き与えられます。しかし役職や肩書きが変わることで、「何をやるか」「誰からどう見られるか」という実質的な部分が、より重く感じられるようになります。

役職定年は多くの大企業に存在する制度ですが、その影響を実際に体感するのは、直面してみて初めてわかるものです。制度として知っていても、「自分ごと」として腑に落ちるまでには時間がかかりました。


「居場所」が少しずつ狭くなる感覚

役職定年が近づくにつれ、次のような変化を感じるようになりました。

若い世代がどんどん現場を担い、自分の役割が「監視」や「レビュー」に偏っていく。プロジェクトの中心にいるものの、決断やスピードの多くが若手や中間職に移っていっている。役職としての”華”と、実務としての”負担”のバランスが、過去とはずれてきている。

こうした変化の中で、「会社の中で、自分はどこに”居る”のか」という感覚が、はっきりしなくなってきました。

会社は好調で、リストラなどの話もありません。しかし組織全体として「若手中心」の構造にシフトしていることが、50代後半の立場では、少しずつ、そして確実に、”居場所の調整”を迫っているのです。


技術者から管理者へ——そして次のステージへ

私は20代〜30代は純粋に技術職としてキャリアを積み、40代以降に管理職としての道を歩んできました。技術者としての矜持と、管理者としての責任を両方持っています。

役職定年を迎えるにあたり、私は自分にいくつかの問いを立てました。

技術者としての腕は、今も十分に通用するのか。管理者としての判断は、若い世代にとって本当に必要なのか。会社という組織の中で、自分が果たすべき役割はまだ継続的に存在し続けるのか。

この問いに対する答えは、「完全に肯定」ではありませんでした。むしろ「以前ほどは必要ではない」という冷静な実感に近かったです。


早期退職=「場所を移す」という発想

このとき、早期退職を選ぶという決断は、「会社をやめたい」という感情だけでなく、もう少しポジティブな意味合いを持っていました。

会社の中で自分の”居場所”が狭くなっている中で、あえて新しい場所へと”場所を移す”。若い世代に任せることが自然な部分を、自分から手放す。

この感覚は、役職定年をただの”降格ライン”ではなく、“次のステージへの通過点”として位置づけることにもつながっています。


会社が好調だからこそ、選べる選択肢がある

私が勤務している会社は業績が好調で、リストラなどの話もありません。一般的に、劣悪な環境やリストラを避けるために退職するケースが多い中、好調な会社をあえて辞めるというのは、賛成されるとは限りません。

それでも、いくつかの条件が重なり、早期退職という選択肢が現実的になりました。

56歳という年齢と33年勤務の実績を踏まえ、「もう少し会社に残る」よりも「自分の時間を使って、本当にやりたいことに注力する」方が、人生の質を高くできると判断したこと。2025年9月に金融資産が5000万円を超え、退職後の生活費の見通しがある程度立ったこと。そして、早期退職制度を使うことで、自分の引退時期を自分の手で整えられること。

これらの条件が揃ったとき、役職定年を「逃げ道」ではなく「次のステージへの踏み台」と捉え、「居場所」を変える決断が、最も自然な選択になりました。


50代で「居場所」の違和感を感じている方へ

役職定年や「居場所」の問題は、特定の会社や個人だけの話ではありません。多くの大企業に勤める50代が、多かれ少なかれ感じている現実だと思っています。

この違和感に対して、私が考える選択肢は大きく3つあります。

①現状を受け入れ、役職定年後の立場で働き続ける 収入の安定を優先するなら、現実的な選択です。ただし「居場所の狭さ」とどう折り合いをつけるかが、精神的な課題になります。

②社内でのロールシフトを模索する 技術職への回帰や、社内のメンター・アドバイザー的な役割への転換を目指す道です。会社の制度や風土によって可能かどうかが変わります。

③早期退職を含む「外への移行」を検討する 会社の外に居場所を作る選択です。退職後の生活費の目処が立っているかどうかが、最初の判断基準になります。私が選んだのはこの道です。

どの選択が正解かは、資産状況・家族構成・健康状態・価値観によって人それぞれです。ただ「どうせ選べない」と思考停止するより、選択肢として意識的に並べてみることが、まず大事だと感じています。

著者プロフィール
もも吉

33年間、IT企業で技術職・管理職として働いてきました。神奈川県在住、妻と大学生の子と3人暮らし(もう1人の子は社会人として独立) 2018年から投資を始め、資産形成を続けてきましたが、役職定年・職場での消耗・健康寿命への意識が重なり、2026年6月に56歳で早期退職することを決めました。このブログは、その決断と準備の記録です。

決断理由