「静かな退職」が蔓延する職場で、あえて本当に退職することを選んだ理由

決断理由
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56歳、大手IT企業で33年勤務してきた私は、最近、職場で少しずつ変化している”空気”を強く感じていました。

会社は業績が好調で、リストラの話はほとんど聞こえてきません。しかし若手中心の構造が進む中、「静かな退職(Quiet Quitting)」が、むしろ一種の”常識”のように広がっている光景が目につくようになりました。

そしてその空気の中で、私は逆に「本当に退職する」という選択を選びました。なぜそうしたのか、この記事で整理しておきます。


そもそも「静かな退職」とは何か

「静かな退職」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは厳密には「退職」ではなく、以下のような働き方の変化を指しています。

会社に残りつつ必要最低限の業務だけを行う。休日出勤・残業を避け、自分の時間を確保する。成長を求めすぎず、せいぜい維持ラインの成果を目指す。

この働き方は、時間と労力を守りたい若者や、疲れ切った中堅にとって精神的なバッファーとして受け入れられています。「会社に全力を捧げなくていい」という意味では、ある種の自己防衛策とも言えます。


会社が好調でも、現場の空気は冷えている

会社の業績は好調で、新規プロジェクトや投資も増えています。しかし現場の「空気」は、まったく別の方向に傾いていました。

若手の多くは、会社の将来よりも自分のキャリアや時間の確保を優先しようとしています。中堅層も、一度燃え尽きてからは「もう一度全力は出さない」という思考に落ち着きつつある。

こうした中で「会社のために全力で頑張り抜く」という姿勢は、むしろ「自己犠牲」と見なされがちです。静かな退職は、もはや一部の人の選択ではなく、職場の標準的な空気になっていました。


「静かな退職」が、自分への問いを生んだ

この空気の中で、私は自分に問いかけました。

会社が好調だからこそ、自分も「静かな退職」を選ぶべきなのか。会社に残りながら自分の時間を守るだけが、最適な選択なのか。あるいは、もっとはっきりと「本当に退職する」という選択肢を、自分で選ぶべきではないのか。

「静かな退職」は、「どこまで我慢して、どこまで守るか」という微妙なバランスの上に成り立っています。会社を完全に辞めるわけではないからこそ、その曖昧さが精神的なコストにもなり得ます。


「静かな退職」ではなく「本当の退職」を選んだ理由

私が「静かな退職」に違和感を覚えた理由は、単純です。

中途半端な状態で居続けることの消耗が、退職そのものより大きいと感じたからです。

若手が中心になり会社が未来を切り開いていく一方で、自分が「静かに時間を守りながら残る」という選択は、会社にとっても自分にとっても、どこかフェアではないと思いました。残るなら全力で。辞めるなら明確に。その二択で考えたとき、56歳の自分に「全力で残る」という選択肢は、正直、見えませんでした。


早期退職を「現実的な選択肢」にした条件

「本当の退職」を選ぶには、当然ながら経済的な裏付けが必要です。私の場合、以下の条件が揃ったことで初めて現実的になりました。

2018年から米国株インデックスを中心に積立投資を続け、2025年9月に金融資産が5000万円を突破したこと。退職金と公的年金のシミュレーションで、2070年まで資産が枯渇しない見通しが立ったこと。子どもが2027年に社会人になる予定で、教育費の出口が見えていること。

これらが揃って初めて「静かな退職より、本当の退職の方が自分らしい」と思えました。


同じ選択肢で迷っている方へ

「静かな退職」か「本当の退職」かという二択は、50代の多くの方が意識的・無意識的に迫られている問いだと思います。

どちらが正解かは、個人の状況によって異なります。ただ、私が経験から言えることをお伝えするとすれば、以下の3点です。

①「静かな退職」は短期的な解であることを理解する

自分の時間を守れるというメリットはありますが、「会社に残りながら手を抜く」という状態は、長期的には自己評価を下げ続けるリスクがあります。一時的な緩衝策として使いながら、次の選択肢を考える時間を作るのが現実的です。

②「本当の退職」を検討するなら、まず数字を作る

感情だけで退職を選ぶのは危険です。まず資産状況・退職金・年金見込み額を整理し、「いつなら辞められるか」を数字で把握することが先決です。数字が見えると、選択肢の現実感が一気に変わります。

③どちらを選ぶにしても、「選んだ」という意識を持つ

「仕方なく残っている」でも「仕方なく辞めた」でもなく、「自分で選んだ」と思えるかどうかが、その後の生活の質に大きく影響します。静かな退職を選ぶなら意識的に、本当の退職を選ぶなら計画的に。どちらも「選択」として持つことが大切だと思っています。

著者プロフィール
もも吉

33年間、IT企業で技術職・管理職として働いてきました。神奈川県在住、妻と大学生の子と3人暮らし(もう1人の子は社会人として独立) 2018年から投資を始め、資産形成を続けてきましたが、役職定年・職場での消耗・健康寿命への意識が重なり、2026年6月に56歳で早期退職することを決めました。このブログは、その決断と準備の記録です。

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