退職から10日あまりが経ちました。 退職金の入金は7月と8月に分けての予定で、まだ手元には届いていません。 それでも、iDeCoへの移換手続きの申し込みが済み、 資産の棚卸しも終わって、 7月11日時点の最新の数字でシミュレーションの前提を見直せる状態になりました。
5月の再検証記事で、 「退職後、実際のデータが手元に溜まったタイミングで再シミュレーションする」と予告していました。 それには少し早いのですが、ちょうどClaudeに新世代モデルが登場したので、 資産状況を最新に見直したうえで、 最新AI「Claude Fable 5」で、44年分のシミュレーションを最初からやり直しました。
退職を決める背中を押してくれた3月の最初のシミュレーション、 そして6月の年金受給時期の試算と数字がどう変わったのか。 今日は「答え合わせ」を正直に書き残します。
Claude Fable 5とは──「Opusの上」が現れた
5月の記事では、Claudeには「Opus・Sonnet・Haiku」の3モデルがあり、 Opusを「腕利きの外科医」に例えました。 今回使ったClaude Fable 5は、その体系のさらに上に位置する新モデルです。
| モデル | 位置づけ | ひとこと |
|---|---|---|
| Fable 5 | 新世代(Claude 5)の最上位 | 今回使用。一般利用できる最高性能モデル |
| Opus | これまでの最上位 | 5月・6月のシミュレーションで使用 |
| Sonnet | 主力・バランス型 | 日常的な調べものや文章に |
| Haiku | 軽量・高速 | 要約やシンプルな質問に |
開発元のAnthropicによると、Fable 5は「Claude 5ファミリー」の最初のモデルで、 Opusより上の新しい階級(Mythosクラス)に属するとのこと。 外科医の例えを続けるなら、「大学病院から招かれた専門医」が加わったイメージです。
実際に使ってみて驚いたのは、計算の「作り込み」でした。 今回は1万通り×20パターン以上のモンテカルロ計算に加えて、 リバランスルール(退職後の運用ルール)や下落年の取り崩し順序、 退職所得控除や年金の税・社会保険料まで、 こちらが細かく指示しなくても組み込んで計算してくれました。
今回の前提──資産状況を最新の数字に見直した
プロンプトは3月の記事で公開したものがベースですが、 数字は7月11日時点の最新値に見直しました。主な変更点は以下の通りです。
- 保有資産:6,806万円(2026年7月11日時点の棚卸し値。6月の資産状況からの変化も反映)
- 退職金:2,400万円(7月・8月に分けて入金予定。33年勤務の退職所得控除を適用し、税引後は約2,339万円と想定)
- 企業型DC 1,400万円のiDeCo移換と、受け取り方(60歳から20年分割)を反映
- 子供の学費:残り70万円で支払い完了
- インフレは通常シナリオで年2%、悲観シナリオで年3%が44年続く前提
期間は2070年(私が101歳)まで。 楽観・通常・悲観の3シナリオで計算しました。
結果①:3シナリオの資産推移

まず、毎年の相場のぶれがなく「期待リターン通り」に進んだ場合の推移です。 通常シナリオでは年金開始(65歳)以降は資産が減らずに増え続け、 悲観シナリオ(リターン大幅減+インフレ3%)でも、 2070年までぎりぎり資産が残る結果になりました。
ただしこれは「一度も暴落が来ない」という、現実にはあり得ない前提の絵です。 本番はここからのモンテカルロ計算になります。
結果②:モンテカルロ1万回──枯渇確率21.3%

通常シナリオで相場のぶれを1万通り発生させた結果がこちらです。
| シナリオ | 2070年までの枯渇確率 | 2070年の中央値残高 |
|---|---|---|
| 楽観 | 5.1% | 約14.5億円 |
| 通常 | 21.3% | 約3.6億円 |
| 悲観 | 65.6% | 枯渇(中央値でもゼロ) |
中央値では資産は大きく増えていく一方、 運悪く退職直後に下落が続いたパスでは回復できない── 5月にOpus 4.7が示した構図と、ほぼ同じ形が再現されました。

悲観シナリオでは、中央値の資産が2060年ごろに底をつきます。 ただしこれは「リターンが期待値より3%低く、インフレ3%が44年間続く」という、 かなり極端な状態がずっと続く想定です。 現実にこのシナリオがそのまま実現する可能性は高くないと受け止めていますが、 「支出を一切調整しなければこうなる」という警告として、重く見ています。
結果③:住宅ローンの繰上返済は「効かない」

3月の試算では「一部返済がやや有利」という結果でしたが、 今回、繰上返済額を0円〜全額(約1,000万円)まで6パターン検証したところ、 どの金額でも枯渇確率はほとんど変わらず、通常・悲観シナリオではむしろわずかに悪化しました。
全額返済すれば利息は約88万円節約できます。 しかし返済に充てた1,000万円が運用から抜ける影響のほうが、 44年の長期では大きい──というのが今回の計算の答えでした。 私はこの結果を受けて、繰上返済はせず、予定通り2035年まで返済を続けることにしました。
過去のシミュレーションと並べてみる
| 時期 | 使用AI | 2070年までの枯渇確率 | 2070年中央値残高 |
|---|---|---|---|
| 3月(退職決断時) | ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexity | 1.5% | 1,247万円 |
| 5月(再検証) | Claude Opus 4.7 | 31.8% | 約1.3億円 |
| 6月(年金試算) | Claude Opus 4.7 | 18.9〜27.4%(受給パターン別) | ─ |
| 今回(資産見直し後) | Claude Fable 5 | 21.3% | 約3.6億円 |
こうして並べると、2つのことが見えてきます。
1つ目。3月の「1.5%」は、やはり甘い数字だったということ。 資産の前提はむしろ良くなった(最後の賞与も入り、6月末の資産は3月時点の想定を上回っています)のに、 枯渇確率は20%台になりました。 AIが進化して、暴落の連鎖・インフレ・税や社会保険料といった 「現実の嫌な部分」を織り込めるようになった結果です。
2つ目。Opus 4.7以降、数字は20〜30%の範囲に収束してきたということ。 5月の31.8%、6月の18.9〜27.4%、今回の21.3%。 モデルも前提も少しずつ違うのに、答えが同じ水準に落ち着いてきたことは、 「この数字は当てにしてよさそうだ」という安心材料になりました。
枯渇確率21.3%をどう受け止め、どう下げるか
21.3%という数字は、 「相場がどうなっても月35万円を101歳まで機械的に使い続ける」 という前提での確率です。現実の私はそんな生き方はしません。
今回は打ち手ごとの効果も1万回ずつ計算してもらいました。
- 資産が6,000万円を割った年だけ生活費を月32万円に絞る:21.3%→15.7%
- 65歳まで月5万円程度の収入を得る:21.3%→17.8%
- 年金を70歳まで繰下げる:21.3%→18.8%(悲観シナリオに特に有効)
- これらを組み合わせる:21.3%→11.4%(悲観シナリオでも65.6%→46.5%)
興味深いのは、どれも「我慢し続ける」対策ではないことです。 普段は月35万円のまま、悪い年だけ3万円絞る。それだけで確率は6ポイント近く下がる。 逆に、安全資産(現金・国債)を増やしすぎる対策は、 長期では株式の成長を削ってしまい、むしろ逆効果という結果も出ました。
結論:資産もAIも変わり続ける。だから定期的に「棚卸し×再計算」
3月に1.5%、5月に31.8%、そして今回21.3%。 同じ人生を計算しているのに、数字はこれだけ動きました。 資産状況が変わり、前提が実績に置き換わり、そしてAI自身が進化したからです。
だからこそ、どれか1つの数字を「答え」として抱え込むのではなく、 定期的に資産状況を棚卸しして、その時点の最新AIで再計算する。 方向性を確認して、必要なら生活や運用を少しだけ直す。 この繰り返しが、早期退職後の資産管理のいちばん現実的な方法だと感じています。
健康診断と同じで、数字は毎回少し違っていていい。 大事なのは「悪化の兆しを早く見つけて、打ち手があるうちに動けること」。 次回は年末の資産棚卸しのタイミングで、また同じ検査を受けてみるつもりです。 そのとき21.3%がどう動いたか、また正直に書きます。
参考:実際にAIに投入したプロンプト
ベースは3月の記事で公開したプロンプトで、 資産状況を7月11日時点の最新値に更新したものです。 Fable 5はこのプロンプトから、検証可能な計算プログラム(Python)を自動で組み、 私のパソコン上で1万回×20パターン以上のモンテカルロ計算を実行してくれました。 「プロンプトを渡すと答えが返ってくる」だった3月から、 「計算の中身ごと確認できる」段階まで進化しています。
条件をご自身の数字に書き換えれば、同じ検証ができます。 (結果は保証されませんので、あくまで参考としてご利用ください)
今後のライフプランを2070年までシミュレーションする。
以下のシミュレーション結果を踏まえて、保有資産金額(年金収入など、以下のすべての要素も加味する)を計算する。
リスクはインフレリスク、投資信託の過去実績におけるリスクも考慮し、楽観シナリオ、悲観シナリオ、通常の想定シナリオをシミュレーションして、保有資産残高のグラフを出力すること。
毎年の保有資産内訳とキャッシュフローと総資産額のスプレッドシートを出力すること。
住宅ローンを退職金で一括返済する場合と一部返済する場合(資産枯渇確率低下に効果的な分割金額)もシミュレーションしてください。
モンテカルロ法で2070年までに資産が枯渇する確率を各シナリオ毎に計算すること。
資産枯渇リスクを低減させるためのアドバイスも欲しいです。
私は1969年生まれ。2025年の年収は1100万円。2026年6月末に退職しました。
今後の収入は退職金と失業手当の見込み。
退職金は2400万円です。(勤務年数は33年で退職所得控除を計算して)
退職後は失業手当を退職1カ月後から150日分受給し、そのあとは妻の扶養に入る予定です。
失業手当は120万円の見込みです。
妻は1973年生まれ。年収は300万円。60歳まで現在の仕事を続け、その間の年収に変更はありません。
妻は60歳時に退職金は支給されない見込み。
子供は2027年3月まで大学生で卒業後は民間企業に就職します。学費の残金は70万円で支払い完了。
2026年7月11日時点の保有資産は
現金が412万円。
個人向け国債が20万円。
投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が1197万円。
投資信託「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が1711万円。
投資信託「ニッセイNASDAQ100インデックスファンド」が364万円。
個別株(国内高配当・米国高配当)が1189万円。
そのほかに企業年金(確定拠出年金)から移管中のiDeCoが1612万円。
iDeCoは2026年12月まで月68000円拠出します。2027年1月以降は拠出をストップします。
iDeCoの運用商品は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)日本を除く」と
「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」で、配分は各50%です。
妻のiDeCoが300万円。
2026年12月まで月23000円拠出します。2027年から月62000円拠出します。
運用商品は夫と同じ2本で、配分は各50%です。
個別株は配当金が3.5パーセント毎年支給され、元本の想定利回りは1%です。配当金はキャッシュに即チャージします。
投資信託の想定利回りは次の値をベースにして、過去実績を踏まえた値で計算してください。
・S&P500:期待9%、ボラ18%
・ACWI:期待7%、ボラ18%
・NASDAQ100:期待15%、ボラ20%
投資信託はすべてNISAを使用しています。
私の年金は65歳から支給で年200万円。妻が65歳未満の間は加給年金が毎年40万円支給されます。
妻の年金は妻が65歳から支給で年140万円です。
60歳から個人年金が毎年30万円、6年間支給されます。
私のiDeCoは年金として60歳から20年間受給します。分割取崩年金として残高が継続運用されるため毎年の支給額が変動します。
月々の支出は35万円です。
上記支出とは別に住宅ローンの残高が約1050万(固定金利2%で900万、変動金利で約200万)。
現在の支払いが毎月約9.5万円、2035年まであります。
上記支出とは別に特別費(冠婚葬祭、住宅維持等)として毎年40万円積み立てて支出に備えます。
資産の運用ルールは次の通り。
2026年末から1年ごとに、以下のリバランスを行なう。
1) 総資産からiDeCo残高と個別株を除いたリバランス対象残高を算出する。
2) リバランス対象残高を次のルールで再配分する。
3) 現金を1000万円確保する。個人向け国債(10年変動)を500万円確保する。
不足する場合は投資信託を売却する。
投資信託の残高不足で売却できない場合は個別株を売却する。
4) 現金、債券を除いた残高を以下の配分にリバランスする。
「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を50%
「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を45%
「ニッセイNASDAQ100インデックスファンド」を5%
ただし各アセットの目標比率±5%の範囲内なら売買しない。範囲を超えた場合のみ一括調整する。
5) リスク資産が前年比でマイナスの時は、リバランス(現金補充、債券補充)を行わず、
現金1000万円から取り崩して凌ぐ。現金が不足する場合は債券を取り崩して現金を補充する。
※この記事の内容は個人の資産運用・シミュレーションの記録であり、投資を推奨するものではありません。投資は元本割れ等のリスクを伴います。実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。
📊 これまでの資産推移をまとめて見たい方は「月次資産公開まとめ」をご覧ください。

