残された時間はどれくらいか?ー健康寿命・平均寿命・寿命中位数から考える

決断理由
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早期退職後の資産シミュレーションをしていく中で、「そもそも自分は、あとどれくらい生きる前提で考えるべきなのか?」という根本的な問いにぶつかりました。そこでまずは、健康寿命・平均寿命・寿命中位数という3つの指標を整理し、そのうえで自分のケース(56歳時点)に当てはめて「残された時間」を数値化してみました。

健康寿命:日常生活に制限のない期間

最初に確認したのが健康寿命です。健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。介護を受けたり起き上がるにも人の手が必要になったりといった状態になる「前」の、自立して生活できる期間の平均値を指します。

日本の最近のデータでは、健康寿命の目安はおおよそ男性72歳前後、女性75歳前後とされています。老後の「やりたいことができる期間」を考えるとき、まずこの数字が1つの目安になります。

平均寿命:0歳における平均余命

次に、よくニュースでも耳にする平均寿命です。平均寿命とは、「0歳児が平均してあと何年生きられるか(0歳における平均余命)」を表す指標です。若い年齢で亡くなるケースもすべて含めて平均を取っているため、実際に高齢まで生き残った人の体感寿命よりやや短く出るという性質があります。

日本の平均寿命は男性81歳前後、女性87歳前後です。

寿命中位数:同年代の「真ん中」が到達する年齢

3つ目が、あまり聞き慣れないかもしれない寿命中位数です。寿命中位数とは、その年に生まれた人(10万人)のうち、「半数(5万人)が生存し、半数が死亡すると期待される年齢」のことです。同じ年に生まれた人たちの「ちょうど真ん中の人」が到達する年齢、と言い換えることができます。

平均寿命は若年で亡くなった人の影響でやや下振れしやすい一方、寿命中位数は「真ん中」を見ているため、平均寿命より1〜3歳ほど高くなる傾向があります。最近の統計では男性84歳前後、女性90歳前後とされています。老後資産のシミュレーションでは、「同年代の真ん中くらいまで生きたケース」を想定したいとき、平均寿命よりもこの寿命中位数を使う方が、実感に近い前提になると感じました。

これらの指標の詳細については、厚生労働省の「簡易生命表」や「完全生命表」のページに詳しい統計と解説があります。

2070年まで生きる前提でシミュレーションしてみた

こうした指標を踏まえて、私は2070年(101歳)まで生きるという前提で、資産シミュレーションを行っています。「56歳時点から見て、各年齢まで生きる確率」を生命表ベースでざっくり換算すると、自分の場合は次のようなイメージになりました。

到達年齢 56歳時点からの生存確率 ライフプラン上の意味合い
65歳 約95.2% 公的年金の受給開始年齢
72歳 約85.9% 男性の健康寿命の目安
81歳 約65.8% 男性の平均寿命(0歳時点)の目安
84歳 約53.2% 寿命中位数(同年代の半数が生存・半数が亡くなる年齢)
91歳 約23.6% 2060年目標(約4人に1人が到達)
101歳 約1.1% 2070年目標(約100人に1人が到達)

※あくまで私の年齢・前提条件をもとにした「イメージ」であり、厳密な公的試算ではありません。

数字にしてみて感じた、驚きと不安

この表を自分で作ってみて、率直に思ったのは、「残された時間は、思っていたより短いかもしれない」ということです。

65歳(年金開始)まではほぼ確実に到達できそうで、健康に動けるとされる72歳くらいまでも8〜9割の確率で到達できそうです。一方で、男性の平均寿命81歳時点では約3人に1人はすでに亡くなっている計算になります。同年代の真ん中である84歳に到達する確率はちょうど5割強。90歳を超えてくると、確率はどんどん下がっていきます。

「日本人男性の平均寿命は81歳」とだけ聞いていると、なんとなく「まだまだ先は長い」と思ってしまいがちです。しかし56歳の今から見たとき、84歳という「同年代の真ん中」までの距離は、すでに後半戦に入っている感覚になります。2070年(101歳)までのシミュレーションは、あくまで「万が一すごく長生きした場合のリスクを見るための上限設定」であり、その到達確率はざっくり1%前後——「100人に1人くらい」という世界です。

数字の向こう側にある、現実

そして、こうした指標を眺めながら、私はどうしても父のことを思わずにいられません。父は65歳のときに癌が見つかり、66歳でこの世を去りました。健康寿命の目安は72歳、平均寿命は81歳——統計の数字はそう言っています。でも現実には、それよりもはるかに早く、その時期が来ることも十分にあり得る。父の姿がそれを教えてくれました。

統計はあくまで「平均」や「中央値」であって、自分個人の運命を保証するものではありません。健康寿命より前に、平均寿命より前に、寿命中位数より前に、人生の幕が下りることは、決して珍しいことではない。だからこそ、私は今回の早期退職を「いつか」ではなく、「今」決断しました。

ライフステージごとの「到達確率」のイメージ

ライフステージの指標 男性の生存確率 女性の生存確率
健康寿命到達時(男性72歳・女性75歳) 約81.0% 約87.9%
平均寿命到達時(男性81歳・女性87歳) 約60.0% 約62.8%
寿命中位数到達時(男性84歳・女性90歳) 約50.0% 約50.2%

ざっくり言うと、多くの人は「健康寿命ライン」までは到達する、「平均寿命ライン」までも6割前後は到達する、「寿命中位数ライン」は2人に1人が到達するボーダー、というイメージです。

シミュレーションは、残り時間の「使い方」を考えるきっかけ

老後の資産シミュレーションというと、どうしても「お金が足りるかどうか」ばかりに目が向きがちです。でも今回あらためて数字に向き合って感じたのは、シミュレーションは「残り時間の使い方」を考えるきっかけでもあるということでした。

いつまで働くのか。どこで、誰と暮らすのか。残りの健康寿命の期間に、何をやりたいのか。長生きリスクを見込んだうえで、どこにお金と時間を配分するのか。「残された時間は無限ではない」——それを数字と、父の記憶が、同時に教えてくれています。

あなたは、何歳までを前提にしますか?

私はひとまず、「101歳まで生きる」前提で資産シミュレーションを回しています。ただ、それはあくまで「最悪のケースに備えるための上限設定」です。父の66歳という現実を知っている私は、「長生きを前提にしながら、短命のリスクも胸に置いておく」という、少し矛盾した気持ちで、これからの人生を設計しています。

あなたは、自分の残された時間を「何歳くらいまで」と想定していますか?そして、その前提に立ったとき、今の働き方やお金の使い方はどう見えてくるでしょうか。

著者プロフィール
もも吉

33年間、IT企業で技術職・管理職として働いてきました。神奈川県在住、妻と大学生の子と3人暮らし(もう1人の子は社会人として独立) 2018年から投資を始め、資産形成を続けてきましたが、役職定年・職場での消耗・健康寿命への意識が重なり、2026年6月に56歳で早期退職することを決めました。このブログは、その決断と準備の記録です。

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