📌 この記事でわかること
- 退職一時金とDB年金を「一時金」で受け取る設計と、その理由
- 退職所得控除の計算方法(勤続年数の端数切り上げ含む)と実際の納税額
- 企業型DCや確定申告との関係——2つの控除を時間差で使い分ける考え方
先日、会社から退職金の正式な通知が郵送で届きました。同封書類には、退職所得の源泉徴収票、退職金明細書、給与所得の源泉徴収票などが一式そろっていました。
概ねの金額感は退職金説明会の時点で把握していましたが、正確な数字が確定したことで、ようやく「現実」として実感できた瞬間でした。結論から言うと、これまでの想定とほぼズレはなく、非常に安心しています。
今回は、退職金の全体像と受け取り方の設計、そして退職所得控除を使った納税額の計算を整理します。50代で早期退職を考えている方には、退職金と税金の設計は避けて通れないテーマだと思います。
私の退職金制度の全体像
私の会社の退職金は、大きく3つの柱で構成されています。
- 退職一時金(早期退職の上乗せ分を含む)
- DB年金(確定給付企業年金の年金部分)
- 企業型DC(確定拠出年金)+マッチング拠出
今回のこの記事で扱うのは、主に「退職一時金」と「DB年金(一時金選択時)」の部分です。企業型DCは60歳まで受け取れない別枠の制度なので、今回の退職金の話からは切り離して考えています(DCの扱いは別の記事で詳しく書いています)。
支給額とタイミング
正式な通知で確定した金額は、概算で以下の通りです。
| 項目 | 金額(概算) | 支給時期 |
|---|---|---|
| 退職一時金 | 約1,700万円 | 2026年7月 |
| DB年金(一時金選択) | 約750万円 | 2026年8月 |
| 合計 | 約2,450万円 | 2026年中 |
制度上、退職一時金が7月、DB年金が8月と、連続した月に分けて支給される仕組みです。金額は想定とほぼズレがなく、「思った通りだった」という安心感が大きかったです。
意外だった「勤続年数の切り上げ」:33年→34年で控除が70万円増えた
通知を確認していて、一つだけ想定と違った点がありました。勤続年数の扱いです。
私はこれまで「勤続33年」として退職所得控除を計算していました。ところが通知上の扱いは「勤続34年」。入社から退職までの実期間は33年と3か月ですが、退職所得控除の計算では1年未満の端数は1日でも切り上げて1年と数えるルールがあるためです。
勤続34年の場合の退職所得控除額は、次のように計算されます。
| 計算 | 金額 |
|---|---|
| 20年までの分(40万円×20年) | 800万円 |
| 20年超の分(70万円×14年) | 980万円 |
| 退職所得控除額 合計 | 1,780万円 |
以前の記事では勤続33年ベースで「控除額1,710万円」と書いてきましたが、切り上げルールのおかげで控除額が70万円増えて1,780万円になりました。地味ですが、ありがたい誤算です。3月末ではなく6月末まで働いたことが、賞与だけでなく控除額の面でもプラスに働いた形です。
納税額はいくらになるのか:計算方法と実額
では、約2,450万円を一時金で受け取ると、税金はいくらかかるのか。退職所得の課税は、給与とは別枠で計算される「分離課税」で、しかも控除後の金額をさらに半分にしてくれるという、非常に優遇された仕組みになっています。
手順は3ステップです。
- 受け取り総額から退職所得控除を引く:2,450万円 − 1,780万円 = 670万円
- それを2分の1にする(課税退職所得):670万円 × 1/2 = 335万円
- 課税退職所得に所得税・住民税の税率を適用する
課税退職所得335万円に対する税額は、次のようになります。
| 税目 | 計算 | 税額(概算) |
|---|---|---|
| 所得税 | 335万円×20%−42.75万円 | 約24.3万円 |
| 復興特別所得税 | 所得税×2.1% | 約0.5万円 |
| 住民税 | 335万円×10% | 約33.5万円 |
| 合計 | 約58万円 |
約2,450万円を受け取って、税負担は約58万円。実効負担率は約2.4%です。現役時代の給与にかかっていた税・社会保険料の負担率を考えると、退職所得控除の威力を実感する数字です。33年間働き続けた人への、税制からのねぎらいのようなものだと受け止めています。
ちなみに、退職一時金(約1,700万円)だけを見れば控除額1,780万円の範囲内なので、単体では非課税でした。DB分も一時金で受け取ることで課税が発生しますが、それでもこの負担率で、まとまった現金を一度に手にできます。
なぜDB年金を「年金」ではなく「一時金」で受け取るのか
DB年金には、毎年一定額を分割で受け取る「年金形式」と、一括で受け取る「一時金」の2つの受け取り方があります。私は一時金を選びました。主な理由は次の3つです。
- 退職所得控除を退職一時金と合わせて最大限活用できる
- 早期退職後の資産運用の自由度が高まる
- 老後の資産全体を自分でコントロールしやすい
年金形式で受け取る場合は公的年金等控除の対象になりますが、私の場合、その枠は60歳以降にiDeCoの年金受け取りで使う設計にしています。DB分まで年金形式にすると、せっかくの退職所得控除の残り枠(約80万円)を使わないまま、公的年金等控除の枠に受け取りが集中してしまいます。
企業型DCは別枠:控除を「時間差」で使い分ける
企業型DC(約1,300万円)は、退職後すぐにiDeCoへの移換手続きを済ませており、60歳から20年間の年金形式で受け取る方針です。この設計のポイントは、2つの控除を時間軸をずらして使い分けることにあります。
- 退職時(2026年):退職所得控除を「退職一時金+DB一時金」でほぼ使い切る
- 60歳以降:公的年金等控除を活用し、iDeCoの年金収入への税金を最小化する
なお、DCを60歳で一時金として受け取ると「退職所得控除の重複調整ルール」により控除が大幅に削られる落とし穴があります。年金形式ならこのルールは適用されません。この点は企業型DCをiDeCoに移換して年金で受け取ることにした理由で詳しく書いているので、退職金とDCの両方がある方はぜひ確認してみてください。
税務手続き:源泉徴収と確定申告の整理
実際の税務手続きについても整理しておきます。
退職所得については、「退職所得の受給に関する申告書」を提出したうえで受け取るため、退職所得控除を織り込んだ源泉徴収で課税は基本的に完結します。届いた退職金明細書にも、退職所得控除額1,780万円がきちんと反映されていました。
一方、給与所得のほうは注意が必要です。私は6月末退職のため、年末時点で会社に在籍しておらず、年末調整を受けられません。実際、届いた給与所得の源泉徴収票にも「年調せず」と記載されていました。1〜6月の給与は月々の源泉徴収で税金を多めに払っている状態なので、2027年2〜3月に確定申告を行って精算する予定です。その際、退職所得や配当関連もあわせて内容を確認するつもりです。
「退職所得=源泉徴収で完結」でも、「年の途中で退職した年=確定申告が必要」。この2つはセットで覚えておくとよいと思います。退職後の手続き完全ガイドにも、このあたりの流れをまとめています。
33年間の会社員人生を振り返って
今回の退職金通知は、会社員としての収入が「これで最後」となる一つの節目でもあります。
33年間働き続けた結果として、これだけの退職金をいただけたこと。自分自身を振り返れば「よく頑張ったな」と素直に思いますし、同時に、これだけの退職金制度を用意し、33年間雇用し続けてくれた会社には、心から感謝しています。最終出社日にも書きましたが、この気持ちは時間が経つほど強くなっている気がします。
これからの資産運用と生活
今後は、この退職金を事前に決めたポートフォリオと運用ルールに沿って組み入れ、今後の生活資金にしていくことになります。資産配分、リバランスの頻度、取り崩しの方針——設計図はすでにあります。
シミュレーション通りにうまくいくのか、不安は正直あります。それでも、自分で立てた計画とルールを信じて、丁寧に暮らしていきたいと考えています。
おわりに:退職金設計のポイントまとめ
今回の整理をまとめると、次のようになります。
- 退職一時金+DB一時金(合計約2,450万円)を一時金で受け取り、退職所得控除1,780万円を最大限活用
- 勤続年数は端数切り上げで33年→34年扱いとなり、控除額が70万円増えた
- 納税額は所得税・住民税あわせて約58万円。実効負担率は約2.4%
- 企業型DCは別枠でiDeCoへ移換し、60歳以降の公的年金等控除に回す——2つの控除を時間差で使い分ける
- 年の途中で退職した年は年末調整を受けられないため、確定申告で精算する
退職金の受け取り方は、一度決めたらやり直しがききません。金額そのものは会社の制度で決まりますが、「どう受け取るか」の設計次第で、手取りは確実に変わります。早期退職を検討している方は、退職金・DB・DCをセットで整理してみることをおすすめします。
※この記事の金額はいずれも概算です。税率・控除額は2026年時点の制度に基づく個人の記録であり、税務に関する公式なアドバイスではありません。最終的な判断はご自身の状況に合わせて、税務署や専門家にご確認ください。
📋 退職の手続きを時系列で整理した「退職の手続きまとめ」もあわせてご覧ください。

