「早期退職しようと思っている」と言うと、周りからは心配そうな顔をされることがあります。一方、「アーリーリタイアを目指している」と言うと、なぜか羨ましそうな顔をされます。
同じことを指しているはずなのに、この温度差はなんだろう。早期退職する私が、この2つの言葉の「本当の違い」を当事者目線で整理してみます。
早期退職は「辞めるための手段」です
早期退職とは、会社が用意した制度を使って、定年より前に退職することです。私が利用したのは、会社の早期退職優遇制度。退職金の上積みがある、いわば「お得に辞める仕組み」です。
ここで焦点が当たるのは「辞める行為そのもの」です。いつ辞めるか、退職金はいくらか、失業手当はどうなるか。7月に離職票を受け取り、8月から失業手当の受給が始まり、妻の扶養に入る。そういった実務の連続が「早期退職」という言葉のリアルな中身です。
ネガティブな響きがあるのは、早期退職がリストラや会社都合と結びついて語られることも多いからだと思います。でも私の場合は完全に自分の意志。それでも「早期退職します」と言うたびに、少しだけ説明が必要な空気を感じました。
アーリーリタイアは「その後の生き方」です
アーリーリタイアは、辞めた後に何をするかという話です。資産をどう運用するか、毎月いくらで生活するか、社会とどうつながるか。私の場合、S&P500を中心としたインデックス投資ポートフォリオを組み、月35万円の生活費を想定した資産取り崩しシミュレーションを2070年まで回しています。「辞めた後も生活が成り立つ」という確信を持てたことが、踏み切れた最大の理由でした。
アーリーリタイアに前向きなイメージがあるのは、自由・選択・自分らしい生き方というニュアンスが強いからだと思います。「辞める」ではなく「始める」という感覚です。
FIREとはどう違うのか
最近よく耳にするFIRE(Financial Independence, Retire Early)は、アーリーリタイアをさらに概念化したものです。経済的自立を達成し、労働から解放されるという考え方で、特に30〜40代の資産形成層に広まっています。
FIREにはいくつかの種類があります。以下は月30万円の生活を想定した場合の目安です。
| 種類 | 特徴 | 必要資産の目安 |
|---|---|---|
| ファットFIRE | ゆとりある生活、不労所得のみ | 1億5千万円超 |
| ノーマルFIRE | 標準的な生活、不労所得中心 | 1億円前後 |
| リーンFIRE | ミニマムな倹約生活 | 4千万円未満 |
| コーストFIRE | 若いうちに積み上げ、複利で将来FIRE | 2千〜3千万円 |
| サイドFIRE | 不労所得+副業・フリーランス | 3千〜5千万円 |
| バリスタFIRE | 不労所得+短時間雇用 | 3千〜4千万円 |
私はどれに当たるのか
正直に言うと、どれかひとつにきれいに当てはまるわけではありません。資産規模はノーマルFIREに近いですが、完全な不労所得生活というわけでもない。ボランティアで社会とつながり、もし資産が想定より減るようなら短時間の仕事も排除しない。そういう「やわらかい」スタンスです。
あえて名前をつけるなら、私はフレキシブルFIREと呼んでいます。既存のどの型にも完全に当てはまらないので、自分でそう名付けました。
この決断に至るまでに、父が早くに亡くなった経験が頭をよぎりました。男性の健康寿命は平均72歳ほど。残り20〜30年を、消耗しながら過ごすのか、自分らしく使うのか。数字のシミュレーションが整い、妻との対話を重ね、子どもも独立目前になったとき、「今しかない」という感覚がすとんと腑に落ちました。
退職金の上積みという制度的な後押しが最後のピースでした。手段(早期退職)と目的(アーリーリタイア)が、きれいに一致した瞬間でした。
あなたはどちらを考えていますか
「早期退職したい」と思っている方に、ひとつ問いかけたいことがあります。
それは手段の話ですか?それとも、その先の生き方の話ですか?
この2つを分けて考えると、何を準備すべきかが驚くほど整理されます。FIREの種類一覧を眺めながら、自分がどのあたりを目指しているか、一度だけ考えてみてください。答えはすぐ出なくてもいい。でも問いを持つことが、最初の一歩になると思っています。

